日常の入口、玄関の豆知識

何気なく使っている「玄関」の意味をご存じですか。
「玄」には「奥深さを感じさせる」とか「奥深い道理」という意味があり、「関」には「大事な場所」や「さえぎりとどめるもの」という意味があります。
その2つの単語が合わさった「玄関」という言葉には深い意味合いがありそうですね。
そこで今回は、この「玄関」について説明したいと思います。
玄関とは
「玄関」を見れば、その家の人の性格や事情がわかると言うように、「玄関は家の顔」と言われますね。
玄関の語源を調べると、奥が深く紀元前6世紀の中国で「老子」の言葉として出てきます。
もともと玄関とは、仏教の言葉で「玄妙な道に入る関門」という意味があり、わかりやすく言うと「奥深くには優れたものがある場所(入口)」みたいな感じです。
大昔には玄関という概念はなかったのですが、仏教の教えと共に寺院などの入口が「玄関」であるという文化が日本に伝わりました。
その影響を受け室町時代に高度に発展した書院造りでは「玄関」の概念があります。
その後「玄関」は貴族や武家の屋敷にも広まりますが、武家屋敷では格式の高さを示す象徴とされ、町民は玄関を持つことを許されませんでした。
明治時代になると身分制度が廃止され、町民もやっと玄関を持つことができるようになり、一般に広まっていったのですね。
靴を脱ぐ理由
日本と欧米を比べると家に上がる時、違いがあることをご存じですか。
そもそも「家に上がる」という表現は日本での表現で、欧米の場合は「家に入る」といいます。
この表現の違いは日本と欧米の玄関の構造にあり、日本では玄関に入ると床が高くなっていることが大きな注目点になります。
一段高くなっている(上がり框がある)ため、日本では「家に上がる」という表現を使うのですね。
なぜ一段高くなっているのかと言うと、日本は高温多湿な気候で湿気が多く、床が腐ったり傷むのを防ぐため床を高くしています。
更に床を高くする高床の文化は太古からあり、弥生時代には倉庫として湿気対策や水害、ネズミの被害を防ぐために使っていました。
また、高床の建物は高温多湿なアフリカや東南アジアでも同様に見られます。
家に上がる時、欧米では靴を脱ぎませんが日本では靴を脱ぎます。
アフリカや東南アジアの地域でも靴を脱ぐ習慣がありますし、お隣の韓国も靴を脱ぎますね。
湿気で足が蒸れたり、汚れた靴で床が不潔になるのを避けるため、靴を脱ぐ文化ができたようです。
玄関のドアについて
日本の玄関は引き戸が減りドアが多くなりました。
引き戸が減った背景には単に洋風もしくは和洋折衷の家が増えたからだと言われています。
また断熱効率がドアより低く、スペース(扉2枚分)が必要なのも減った要因の一つかもしれませんね。
そして日本のドアはほとんど外開きですが、欧米ではドアは内開きです。
欧米のドアが内開きな理由は、防犯上の理由でドアを内から押さえたり、物を置いてしまえば外からの侵入を防ぐことができるためです。
逆に日本がなぜ外開きかというと、玄関で靴を脱ぐ習慣があるためだと言われています。
内開きにすると玄関内の靴が邪魔になり、限られた玄関のスペースを有効に活用できないため、玄関のドアはほとんどが外開きなのですね。
我が家の顔
玄関は「我が家の顔」として、大事な役割を果たしていますが、お客様を迎えるのも玄関の大事な役目ですよね。
玄関には上座と下座があることをご存じですか。
上座と下座を分けるポイントは下駄箱にあり、飾り棚が下駄箱の上にある場合は、下駄箱側が上座。
飾り棚がない場合は下駄箱側が下座になりますので、目上の方やお客様と一緒の場合、自分は間違えないように下座に靴を揃えるようにしましょう。
生活の中で、「我が家の顔」として活躍する玄関。
第一印象をよくするためにも、玄関を清潔に保ちましょうね。